2016/02/19
YMOTOHASHI
2016/04/26 更新
乗り心地に影響することはもちろん、車体の姿勢や操縦安定性をコントロールするためにも重要なショックアブソーバー。他のパーツと同様、消耗品なので寿命があり、使用状況により減衰力は落ちていきます。今回はこのショックアブソーバーの構造と寿命について簡単にご紹介します。
まずはショックアブソーバーの構造と役割についてご紹介します。
ショックアブソーバーの取り付け位置例
ショックアブソーバー(shock absorber)とは直訳して衝撃吸収体ですが、総称として機械及び構造物や建築物の振動を減衰する装置で、「ショック」と略して呼ばれたり、JIS規格名称として「ダンパー(damper)」とも呼ばれます。
自動車や自動二輪においては主にサスペンション部分を構成するパーツの一つで、「スプリング」と一緒にタイヤの奥裏側あたりに取り付けられています。
「スプリング」は文字通りバネの役目で、このバネの弾性が路面からの衝撃を和らげますが、路面の起伏が激しい場合に衝撃を吸収した後に再び元の形に戻るときに、元の位置を通り越して反対方向に跳ね返ってしまいます。この運動はバネの周期運動といいますが、これにより車体は逆に上下左右の揺れが激しくなってしまいます。
ショックアブソーバーの有無による振動を表した図
ショックアブソーバーは、このバネの周期振動を抑えるために使用される装置で、振動を抑える力を「減衰力」と呼びます。つまり、「サスペンション」とはこういった緩衝装置の総称のことで、俗に言う「サス」という言葉は「スプリング+ショックアブソーバー」のことを意味しているわけです。
複筒式ダンバー概念図
A:ピストンロッド B:外筒 C:内筒 D:ピストン(ピストンバルブ) E:オイル F:ベースバルブ
現在では、ほとんどのショックアブソーバーがオイルを満たした筒(シリンダー)に、先端にピストンを付けたピストンロッドを入れてストロークさせ、ベースバルブで制御しつつ粘性抵抗力を得るオイル式(液体式)を採用しており、その粘性抵抗でもって減衰力を保っています。注射器に例えると、シリンダーが注射器、ベースバルブが注射器の口で、オイルが注射液、ピストンが注射器の中の指で押す部分といったイメージです。
この粘性抵抗力がショックアブソーバーの寿命に関わってくるのですが、それは後ほどご紹介します。
ベースバルブに不具合がでたり、ピストンの周囲が摩耗してしまったり、中のオイルが漏れ出て粘性が落ちたりすると、寿命が来てショックアブソーバーは設計通りに減衰力を出せなくなるので壊れた状態、いわゆる「抜けた」状態になります。
抜けた状態になるとバネの周期振動を抑える事が出来なくなりますから、スプリング自体が延び縮みを繰り返し、なかなか収まらなくなり車は走行は不安定となります。
ショックアブソーバーの寿命
映像前半はまだ生きているショックアブソーバー。後半は死んでいるショックアブソーバー。
ショックアブソーバーが動作せず減衰力がゼロになり、4つの車輪がそれぞれバネのみだったと仮定して、それぞれが走行中に各々収縮し続けたとしたら・・・車がコントロールを失うのは想像するに難くないと思います。
ショックアブソーバーに寿命がきて不具合が起こると車には主に以下のような影響が生じます。
ショックアブソーバーに不具合があると、車の制動距離つまりブレーキを踏んでから車が停止するまでの距離が長くなります。デコボコの多い道路では顕著になり危険です。
寿命のきたショックアブソーバーで走行していると、車体がサスペンションの上に座った状態になり、ハンドリングに対する車の反応が鈍くなります。
走行中やブレーキをかけたときにタイヤに無理な負担がかかることになるので、グリップが低下し、摩耗が激しくなります。結果的にタイヤの寿命も短くなります。
当然ですが、ショックアブソーバーに寿命が到来して機能しなくなると、ブレーキをかけたときにガクンと沈みこむ形になり、反対に加速すると跳ね上がり、ハンドルを切ったときなどに横揺れが生じます。その際に連続振動が加わって、乗り心地が悪くなります。
車を走行していて、道路の段差などでタイヤの付け根あたりから、「ポコポコ」「ゴトゴト」などという異音が発生する場合はショックアブソーバーの寿命である粘性抵抗力・減衰力が無くなっている状態、抜けの可能性があります。
なぜ不具合が発生するかというと、車の使用年数、走行距離、走行状況など様々な因果関係がありますが、主な理由は以下のようなものが挙げられます。
ダートや、舗装されていても起伏や凹凸の激しい道路を走行すると、それだけショックアブソーバーにかかる負担も大きくなくなるため消耗も早くなり寿命は短くなります。
過積載もショック、サスペンションのみならず足回り全体への負荷をかけた状態です。車両が沈み込むことによってショックアブソーバーがフルボトム状態で走行することになり、ショックアブソーバー内部のピストンロッドやベースバルブに負荷がかかりショックアブソーバー抜けや寿命を早める原因になります。
格好や見栄えも良くなるレース走行やローダウンも時としてはショックアブソーバーの寿命を早める場合があります。
単純にレース走行やローダウンが原因になるわけでは無くて、レース用に競技用パーツ等で足回りを補強していなかったり、ローダウンスプリングとメーカー純正ショックアブソーバーの組み合わせでスプリング力を下げただけによるローダウンなどはショックアブソーバーがボトムする時間や回数が増えて負荷がかかり寿命が短くなると考えられています。
ショックアブソーバーは、20,000km走行後つまり最低1,000万回の動きを繰り返した段階で、最大の安全性、快適性、寿命が得られる部品を選ぶ必要があります。
アブソーバーの寿命はメーカーによって品質保証が様々で、また走り方や走行する路面の状態によって大きく異なってきますが、一般的に5年程度の寿命と言われているようです。また、期間ではなく走行距離やショックアブソーバーの伸縮回数によっても寿命は左右されるという見方もあります。
ショックの保証伸縮回数はメーカー基準値で数百万回程度となっているとの話もあり、実際には伸縮回数を走行距離に置き換えて、20000km走行で最低1000万回は動作するとする例もあるので、理論上はたくさん走る方は2,3年で不具合が発生して寿命が到来する場合もあります。ショックアブソーバーは消耗品ですので、もちろんそれらの基準を超えても全く大丈夫なこともありますし、それ以下の走行距離や年数でも壊れてしまったケースもあります。
構造物や建築物用に使用されるショックアブソーバーの場合は寿命が来てもオーバーホール(分解して内部の部品や液体を交換)するという手段がありますが、自動車の場合はスポーツカータイプを除きショックアブソーバーの寿命や故障などについては基本的には交換したほうが良いようです。純正部品がベストともいえますが、社外品でも安くて自分にあったものを選べますので、保障が無いなどの理由として純正以外に抵抗が無いようであれば選択肢の一つとして社外サスペンションに交換するという方法もあります。
ショックアブソーバーについて構造や寿命について簡単にご紹介しましたが、その基本的な機能と役割、寿命が来た場合についてご理解頂けましたでしょうか。
現在のマーケット製品ではショックアブソーバーの寿命たる減衰力を安定して維持できるような製品として車高調整式ショックやステアリングダンパーなどもあり、そういったショックアブソーバーを装着することで走りのスタイルと足回りの寿命を両立させることもできます。
乗り心地や燃費、安全性など車の寿命にも影響する要因の一つとも言えるショックアブソーバー。その機能と寿命を把握してメンテナンスを正しく行い、快適なドライブ・カーライフをお楽しみください!
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