2016/04/01 更新
甘く見ちゃ絶対ダメ!バイクのタイヤ寿命についてキチンと認識を!
バイクにとってタイヤは生命線。寿命を迎えたタイヤを交換せずにバイクに乗り続けるのは違反になるだけではなく重大事故に直結します。バイクのタイヤの寿命についてキチンとした認識を持ち、適切なタイミングで交換して快適な走りと安全を確保しましょう。
当たり前の話ですが、2本のタイヤしかないバイクは四輪と違い簡単に倒れてしまいます。バイクというのは、「かろうじて止まる」ことよりも「意外と早く転倒してしまう」ことの方が多く、たとえ立ちゴケであっても傷を負うことは免れません。
まして、ハイスピード走行中に転倒すれば車体の全損はもちろんのこと、生命の危険に直結します。
濡れた地面でバイクの転倒リスクは増加
寿命を迎えていない新しいタイヤでも、操作のミスでバランスを崩すとあっという間にバイクは転倒します。
寿命に達したタイヤならば、いうまでもありませんね。
バイクは後輪駆動ですのでエンジンの力は全て後輪に伝わりますし、車両の重量バランスも後輪に多く負担がかかるようにできています。
したがってバイクのタイヤは、前輪に比べて後輪が激しく摩耗し、早期に寿命を迎えます。運転を始める前に点検する際は、前後のタイヤともによく見るようにしてください。前輪に余裕があっても、後輪は寿命直前というケースは珍しくありません。
タイヤの接地面は地面との摩擦で削れていくので摩耗という形で現れますが、タイヤの寿命は接地面だけで見るわけではありません。タイヤの側面、サイドウォールの部分も傷んできます。
経年劣化によるゴムの硬化、油脂類やケミカルの付着による化学変化、走行中に飛来した小石類の衝突によるダメージなどでサイドウォールが損傷してきたら、接地面の溝が深く残っていたとしてもタイヤとしての寿命は尽きたことになります。直ちに交換してください。
経年劣化でひび割れしたサイドウォール
こうなってしまえばもう危険。走行距離が短くてタイヤの溝が残っていても、購入して6年も経てばこんな感じになってしまいます。このタイヤは明かに寿命です。
スリップサインとは何か:バイクのタイヤ
タイヤの溝についてはスリップサインで判断しますが、スリップサインが露出していなくても
上の動画で説明してるようにサイドウォールがひび割れているような状態でしたらもう危険だということをよく覚えておいてください。
バイクのタイヤにのスリップサインは、四輪のタイヤに比べて位置のバリエーションが豊富です。サイドウォールの△印を見つけ、自分のバイクに装着されているタイヤのスリップサインを見つけてください。
ブリヂストン BT016 PRO の例
ダンロップ D407 の例
ダンロップのタイヤでは、スリップサインを示すマークが△印ではなくダンロップのロゴです。ちょっとおしゃれですね。
ミシュランのタイヤも同様に、ミシュランマン(ビバンダム)が刻印されています。
スズキ・アドレスV50用タイヤの例
もうこれは完全にタイヤの寿命です。スリップサインが完全に露出するとこんな感じになります。
車検制度のない50ccのバイクだからといって、こんな状態のタイヤでバイクに乗るのは絶対に禁止!
タイヤの寿命=あなたの寿命になってしまいます。
四輪の世界では、タイヤ摩耗を平準化するためにタイヤローテーションを行うのが常識です。これは、四輪のタイヤが基本的に前後で同じ形・同じサイズだからできるのですが、バイクのタイヤは原付スクーター用などの一部を例外として、前後の形状とサイズが異なります。
よってタイヤローテーションでタイヤの寿命を稼ぐことはできません。バイクでは後輪に負担が集中するだけにローテーションの効果は絶大なのですが、その恩恵にあずかれるバイクの車種は多くありません。
ブリヂストンBT-39SS 90/80-17
このタイヤのように、フロント・リア共通で使用できるタイプのタイヤも少数ながらあります。これで前後とも同サイズを装着するバイクならば、タイヤのローテーションは可能です。
しかし筆者も一時期、自分のバイク(HONDA CD125T)にこのタイヤを使用していましたがローテーションは行いませんでした。
バイクの車体から車輪を取り外すのは面倒ですよね…
特にレースユースも可能するハイグリップタイヤは、その試合(あるいは想定している周回数)だけ使えればいいという設計ですので、優秀なグリップ性能を重視する代わりに寿命は短いです。
タイヤの製造技術の飛躍的な進化とともに、ハイグリップタイヤでも長い寿命をうたっているものがありますが、従来のハイグリップタイヤに比べて寿命が延びているわけであって、一般的なタイヤに比べて同等というわけではありません。
レースユースも可能な、ダンロップTT900GP
筆者もこのタイヤを使用しました。タイヤの説明では強烈なドライグリップとうたっているものの、レイングリップも見事なものでした。(ウエット路面であることを感じさせないくらい)。しかし寿命は短く、わずか6000キロでずる剥けになりました。寿命を迎える1000キロ前には、そのグリップ性能もガタ落ちになりました。
経済性の面では最悪ですが、運転しやすく乗り心地は絶品。もう一度履いてみたいタイヤです。
バイクの運転しやすさは、タイヤに大きく左右されます。
新品タイヤからから皮が剥けてきてタイヤの性能が徐々に発揮されていきますが、スリップサインが見えてくるころには、その性能はほとんど失われています。
スリップサインの状態で判断するのではなく、運転のしやすさで判断しましょう。
バイクは一瞬の操作で大きく反応する乗り物ですから、摩耗が進んで応答性が悪くなったタイヤを履くのはとっさの危険回避に失敗するなどの事故原因にもなっていきます。
特に通勤、通学のためだけにバイクを使う人は雨天であっても運転しないわけにいきません。タイヤの劣化は真っ先にレイングリップに現れます。雨天走行時にヒヤリとしたならば、タイヤ交換を検討してください。
タイヤの寿命ギリギリまで使うのはどんなバイクでも得策とはいえません。
中程度に摩耗が進んだタイヤ
サイドウォールの状態は良好で、スリップサインにもやや余裕があります。しかし、この程度まで摩耗が進み出すとタイヤ本来の性能は落ちてきて、それが体感できる程度になってきます。
急制動でロックさせない
ABSの装着されていないバイクでは、急制動時にタイヤをロックさせてしまいがちです。タイヤをロックさせると、その時に設置していた部分だけが異常摩耗します。
タイヤのロックによる異常摩耗をフラットスポットといいます
これはバイクのタイヤではなく四輪のタイヤですが、ロックさせてできたフラットスポット(異常摩耗箇所)が大変わかりやすい写真なのでご覧ください。
急制動を試みてタイヤをロックさせてしまうと制動に失敗して転倒・衝突する危険性も上がります
。ABSのついていないバイクでは、安全な場所を見つけて、ロックさせない急制動の技術を体得する練習を行いましょう。
適正な空気圧を管理しよう
バイクのタイヤは形状が複雑で、適切な空気圧を充填することで設計通りの形となります。空気圧が少なすぎるとタイヤのショルダー部分が偏摩耗するだけでなく、チューブタイヤの場合はパンクの原因になります。、空気圧が過度に高いとタイヤの中央部に摩耗が集中します。
偏摩耗したタイヤの例
偏摩耗が進むとこのようなゴツゴツとした形状になります。当然、バイクの運転に強い悪影響を及ぼします。タイヤの溝はまだまだ深いですが、もうここまでひどく偏摩耗したタイヤは寿命としかいいようがありません。
液体の付着に注意!
タイヤにとって、オイル・グリースや溶剤(パーツクリーナー)、冷却液といった液体は大敵です。これらが付着すると、タイヤの寿命に悪影響を及ぼします。
特にチェーンメンテナンスを行う時にはスプレーがタイヤに付着しないよう、タイヤに覆いを掛けて行いましょう。
ビニール袋でタイヤを覆ってチェーンのメンテ
万一付着したら、すぐに拭き取ってください。タイヤは多孔質なので、液体を速やかに吸収します。作業の前にはウエスやタオルをそばに置いてください。
タイヤを外して保管する場合は
タイヤを買ったままにして装着しない場合やバイクから外して保管する場合は、置き場所に注意してください。
煙の入る場所や熱源のそばは厳禁ですし、電気モーターの近くはオゾンが発生してタイヤの寿命を縮めます。
保管しているうちに劣化して、使いたいときに寿命を迎えていた、では話になりません。どうしても条件の悪いところに保管する場合は、タイヤを布や新聞紙で何重にもくるんだ上で、段ボール箱などに収納しておくと多少は安心できます。
寿命を迎えたタイヤを販売店で処分するときは、廃タイヤ料として数百円の料金を請求されます。
これを嫌って山林などに不法投棄する例が後を絶ちませんが、絶対にしてはならないことです。
廃タイヤを正しくリサイクルすることにより、建設資材や各種の構造材として生まれ変わります。スチールベルトを内蔵するタイヤの場合は高精度な金属再資源として再生されます。
しかし、不法投棄されたタイヤは何十年たっても自然に還元されることなくそのままに残ります。
寿命に達して履けなくなったタイヤを正しく処分し終えることが全てのドライバーの責務であることを忘れてはなりません。
お読みくださいましてありがとうございました。