バイクにはエンジンガードを!エンジンはバイクの大切な心臓です!!
2016/01/15
ダミアン
2016/03/30 更新
大切なバイクを長く快適に乗りたいならば、エンジンオイル選びは重要です。バイクの種類や性質に合ったエンジンオイルを選び、適切な交換サイクルを守ることで愛車の寿命と走りの質が向上します。この記事を参考に、あなたのバイクに最適なエンジンオイルを探してみましょう。
ガソリンエンジンを搭載するという点では四輪とバイクは同類ですが、エンジンオイルにかかる負担の面で、バイクは四輪に比べて過酷な条件を抱えています。
・エンジンが高回転である
・オイルの絶対量が少ない
・MT車の場合は、エンジンだけでなくクラッチ・トランスミッションも潤滑する
・車種によってはオイルエレメントを持たない
・車種によってはエンジンの冷却も担う
バイク用の良質なエンジンオイルは高いエンジン回転数と急激な加減速に耐えられるような成分で作られています。
2輪車用エンジンオイルの潤滑範囲
2輪車用エンジンオイルはエンジンとトランスミッション、クラッチ類の潤滑を全てひとつで担当
二輪用と四輪用の差 シェル アドバンス
以前はクルマもバイクも同じオイルを使用することが可能でした。
しかし近年ではクルマとバイクのエンジンは、根本的に異なる思想のもと設計されています。
例えば最高出力馬力を比較すると、高性能なバイクのエンジンは600ccの排気量で120馬力を搾り出すのに対して、クルマはどんなにがんばっても NA2000ccで200馬力程度です。一般的には1600ccで100馬力といったところでしょう。 エンジン回転数についても、バイクは16,000〜20,000rpmに対して、クルマは10,000rpmがやっとでしょう。
エンジンオイルにかかる負担が大きいため、劣化の度合いも四輪に比べてハイペースです。四輪ですと、頻繁に交換する人で3000キロから5000キロ、長いスパンで交換する人で1万キロから2万キロといった程度ですが、バイクの場合は、四輪に比べてより短いサイクルでの交換が大切です。
劣化してエンジンオイルの潤滑能力が低下した場合、影響する範囲が四輪よりも大きいため、体感性能にも、愛車の寿命にもデメリットが生じます。
日本国内におけるバイク用エンジンオイルの標準規格は、JASO(公益社団法人 自動車技術会)が制定しています。
JASOの定めるバイク用エンジンオイルの規格に合致した製品は、安心してバイクに使用することができます。
バイク専用に設計されたものはもちろん、四輪とバイクの両方に使用できる製品もあります。海外メーカーのエンジンオイルも、日本国内での流通のため、JASOの規格を取得する製品がほとんどです。
JASOの規格を取得したエンジンオイルには、下図のような表示が行われています。商品パッケージをよく見て確認してください。
JASO MAマークの詳細
JASOが定める4サイクルエンジン用のオイルには、大きく分けてMA級とMB級に分かれます。
さらに、MA級にはMA1とMA2という区分があります。
これらはガソリンエンジンのSJ級とSM級にあるような性能の優劣を示すものではなく、摩擦係数などの特性の分類を示すものです。
MA級はMB級に比べるとせん断安定性が高く、主にMT車に使用されます。
MB級はMA級に比べる低摩擦性に優れ、主にスクーターに使用されますが、一部のMT車もMB級のオイルを使用します。
規格としてのMA級の範囲は広いため、その中でも比較的摩擦係数などの高いものをMA2とし、比較的摩擦係数の低いものをMA1としています。
JASO MA MBの概要
バイクの指定オイルとして、MA級と指定されている場合は、単にMAと表示されているもの、MA1と表示されているもの、MA2と表示されているもの全てが適切です。
しかし、MA1と指定されている車種については、必ずMA1のエンジンオイルを、MA2と指定されている車種はMA2のエンジンオイルを使用してください。
単にMAとだけ表示されているエンジンオイルを使用したい場合は、その製品データを手に入れて、下の表のそれぞれどちらに合致しているかを確かめてください。
JASOの各グレードの特性指数の表
もちろん、MB級指定のバイクにMA級のエンジンオイルを使うことや、その逆は禁物です。
特に、MA級指定のバイクにMB級のエンジンオイルを使用した場合、その特性の違いによりクラッチやトランスミッションに支障を来すことがあります。
JASOでは、2サイクルエンジン用オイルの規格としてFA、FB、FC、FDの4種類のグレードを定めています。
すでにFA級は廃止されており、FB級の製品もまず見かけません。市場に出回っている製品の大部分はFC級とFD級です。
JASO FCマークの詳細
4サイクルエンジン用のMA級・MB級が性能の違いを示さないことに対して、2サイクルエンジン用の各グレードはAからDに進むにつれ高性能であることを示しています。
FA 2サイクルエンジンにとって最低限の性能を有する。
FB FAに比べて特に潤滑性、清浄性に優れる。
FC FBに比べて排気煙、排気系閉塞性に優れるロースモークタイプ。
FD FCに比べてエンジン高温時の清浄性能を向上させた
エンジンオイルは、その成分の大部分を占める「ベースオイル」に様々な添加剤を配合して、潤滑性能など各種の性能を作り上げていきます。
その土台となる「ベースオイル」には様々な材料が使われており、それによって性質も異なります。
エンジンオイルの中身
最もスタンダードな材料で、原油を精製する過程でエンジンオイルとして必要な成分を選び抜いたものです。
価格が安く、特に高性能なバイク以外ならば車種を選びません。しかし、後述の部分合成油、化学合成油に比べると性能の劣るものが大半です。
一部のメーカーは、鉱物油に高性能な添加剤を配合して経済性と高性能を両立した製品をリリースしています。
また、VHVI(Very High Viscous Index:超高粘度指数)と呼ばれるベースオイルも鉱物油の一種です。
これは鉱物油を水素化精製して作ったもので、化学合成油に近い性能を持ちます。メーカーによってはVHVIを化学合成油とみなして表示している場合もあります。
鉱物油と化学合成油を配合したものを、部分合成油または半合成油と呼びます。
半合成油と書いてあっても、必ずしも成分の配合比は1対1とは限らず、誤解を招き安いためこの表記は徐々に少なくなっています。
個々のエンジンオイル製品において、鉱物油と化学合成油がどの割合で含まれているのかは、私たちエンドユーザにとって知ることはできません。理屈の上では、1滴でも化学合成油が含まれれば部分合成油と名乗れるのです。
部分合成油は、鉱物油の経済性と化学合成油の高性能さをそれぞれバランスよく引き継いだものといえます。
バイクは特に、エンジンオイルによって走行フィールが変わりやすいので鉱物油を普段使っている人が部分合成油に交換すると、出費の増加を上回る満足を得ることがあります。
ベースオイルをすべて化学合成したもので作ったもので、製造コストはかかりますが、低温時の始動性、高回転時での油膜の強さ、高温環境における耐久性など、エンジンオイルとして求められる理想的な性能を追求することができます。
しかし、一部の鉱物油指定のバイクとは相性がよくない場合もあるようです。相性のよくないバイクに使うと、樹脂パーツの膨潤を引き起こしオイルの滲み出しにつながる事があります。
化学合成油の強みは、過酷な環境でもなかなか劣化しはじめないことです。しかし一度劣化しはじめると勢いよく劣化し続ける製品があります。
化学合成油を使う場合、走行フィールが少しでも悪くなってきたら早めに交換するのが得策です。
エンジンオイルは温度の影響を強く受けます。
低い温度に晒されればドロドロと固まっていき、次第に流れなくなります。
逆に高い温度になればなるほど水のようになってしまい、油膜の保持ができなくなります。
エンジンオイルがどのくらいの温度で使用できるかを示したのがSAEグレードと呼ばれる表記で、オイルの容器の目立つところにその値が書いています。
SAE粘度グレードの表示例
SAE粘度グレードには、数字1つだけで表示する「シングルグレード」と2つの数字を組み合わせて表示する「マルチグレード」があります。
ハーレーダビッドソン専用のエンジンオイルには、シングルグレードのものが一部存在しますが、ほとんど全てのエンジンオイルは、マルチグレードです。
マルチグレードの2つの数字は、左側に5W、10WといったW(Winterの意味)低温時の粘度を示す値、右側に30や40といった100度での流動性を示す値が示されます。ふたつの値を組み合わせると、下の図の温度範囲でそのエンジンオイルが使用できることを意味します。
SAE粘度グレードと使用できる気温の表
最近では夏場の気温が、気象台発表の数字であっても35度を越えることが珍しくありません。マルチグレードの右側の数字が30ですと、近年の酷暑には耐えられないことを意味しています。
バイクそのものの指定粘度が10W-30などと表記されていても、夏場には10W-40を使ってみるのがバイクへのいたわりといえますが、右側の数字が大きいオイルは元々の性質として固いため、必要以上に高い数字のオイルを使うとエンジン性能に悪影響を及ぼします。
筆者のバイク(HONDA CD125T)では、指定の粘度が10W-30とされています。
10W-30だったらなんでもいいのかと、知識の浅かった頃、MOTULのサーキット走行向けオイルとして発売されていた、10W-30の製品を購入して使ってしまいました。
同じ10W-30であるだけで、オイルとしての設計は全く別物。12馬力の非力な2気筒125ccエンジンにはその性質が全く合わず、走行フィールがどんどん悪くなり、結局修理に預けて大出費となる結果となりました。
粘度グレードはエンジンオイルの性質を示す一部分に過ぎません。バイクに合わないものを使うのは禁物です。
近年の四輪車用エンジンオイルは、省燃費を進めるために摩擦低減剤(減摩剤)を多く配合しています。
MT車のバイクの大部分が湿式クラッチという、エンジンオイルに浸されたクラッチを使用しているため、四輪車用オイルに含まれる摩擦低減剤がクラッチを滑らせてしまうのです。
しかし、スクーターのような湿式クラッチを持たないバイクの場合はこの問題が起きません。スクーターの場合、エンジンオイルが担当する領域は四輪車と同じですし、MT車に比べると低い回転数で走行しますので、四輪車用のエンジンオイルでも耐えられます。
著名なエンジンオイルメーカーのひとつ、Gulfの見解を引用いたします。
Gulf ロゴ
最近流行の4サイクルスクーターの場合であれば、4輪用のエンジンオイルを使用しても問題ありません。 つまり、最新の品質規格油である4輪車用の API:SM でも良いわけです。
しかし、2輪用には専用の JASO : MA やMB がありますが、湿式クラッチを持たない4サイクルスクーターの場合は JASO 二輪規格に合格したオイルは必要ありません。 その理由は以下のとおりです。
スクーターのエンジンは4輪用に近い常用回転域を使用しているため、特に高回転に対する配慮をしなくて良い
→ 最もトルク特性の良い回転域を常に使用している
ミッション式スポーツバイクのような多段式ミッションを持たず、駆動系は「ドライ CVT」を採用している
→ オートマチックである
また、4輪車の CVT に指定される CVT フルードも要求していません。 スクーターの CVT ベルトは強化ゴムです。CVT 機構は完全ドライですので、オイルは必要ありません。
クラッチ機構はあるものの「全自動円心式」を採用している
→ 湿式クラッチに対する配慮が不要
2輪専用油として制定された JASO 規格の考え方 (湿式クラッチに対する摩擦特性が最も重要) がまったく必要ないわけですから、一般に市販されている4輪用のエンジンオイルが使えるわけです。
しかし、2輪用として開発された JASO:MA などを使用しても問題はありません。
小排気量スクーターの中には2サイクルエンジンを搭載している車種があります。もちろん、これらの車種の場合は四輪車用のエンジンオイルを使ってはいけません。
2サイクルエンジン専用のオイルを使わないと、確実にエンジンが故障しますのでご注意ください。
2サイクルエンジン搭載のスクーターの例 (スズキ・レッツ2)
バイクにとってエンジンオイルは重要なパーツです。大がかりなチューニングやカスタマイズをするのは大変といった方でも、そのバイクに適したより高性能なエンジンオイルを選ぶことによって体感性能のアップが期待できます。
また、エンジンオイルの交換を怠るとバイクの寿命は大幅に縮まります。生活の足として使うにも、趣味のアイテムとして使うにしても、一度手に入れた愛車を大事にしたいなら、エンジンオイルに対する配慮を怠らないことがとても大切です。
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